東日本大震災で亡くなったママの笑顔の旅立ち 第2話

前回からの続きです。

ご相談者さま、石川美津子さん(60歳)。

東日本大震災で、娘さんご夫婦が3歳の息子、翼君を残し、帰らぬ人となってしまいました。

翼君のお母さんとコンタクトを取ろうと試みましたが、うまくコンタクトが取れず、

後日、私は、娘さんご夫婦のマンションへ伺うこととなりました。

そのときに、できれば、私が到着する少し前に、翼君をマンションにお連れしてほしいとお願いしました。

 

当日、マンションに到着し、玄関ドアを開けた瞬間、私は空気がとても重く感じました。

明るいナチュラルな木目のインテリアの素敵なお部屋なのですが、そこには、翼君のお母さん(香代さん)の気配がありました。

 

「どうぞお上がりください」

 

美津子さんに案内されて室内に入ると、玄関前からまっすぐ伸びている廊下の突き当たりのリビングのテーブルで、翼君が絵を描いていました。

そして、翼君の横には、お母さん(香代さん)が寄り添うようにして、その絵を見つめていたのです。

私はすぐに、美津子さんに現状をお伝えしました。

 

「今、翼君の横に、娘さんの霊がいらっしゃいます」

 

美津子さんと一緒にいた長女の方の目からは、大粒の涙がこぼれました。

私は、リビングの隣の和室をお借りして、そこでゆっくり翼君のお母さんとコンタクトを取ることを試みました。

しばらくすると、メッセージが届きました。

 

メッセージの第一声は、「私はまだ、翼を置いて向こうには行けない」というものでした。 

この言葉から、翼君のお母さんが、どんなに無念な気持ちであったかが伝わってきます。

 

「あんなに小さい我が子を遺し、なぜ逝かなければならなかったの?突然の出来事で、何の心の準備もできていなかった……」

 

翼君のお母さんの悲痛な想いと共に、無邪気に絵を描く翼君の姿が、とても悲しく私の目の前に映し出されていました。

 

「お願いです……。どうか、もう少し、あと、もう少しだけ、翼のそばにいさせてください。もう少しだけ、この子のそばにいたいんです。そうしたら、私は必ず向こうに行きます」

 

このメッセージを受け、私は確信しました。

私のカウンセリングルームで香代さんと交信がまったく取れなかった理由は、私と交信が取れたら、成仏させられてしまうかもしれない、まだ霊界には行きたくない、翼君のそばにいたい、という想いがあったからなのでしょう。

私は美津子さんに、香代さんの想いと、この状況を伝えました。

 

「成仏するかしないかは、私に決められるものではなく、香代さん自身が決めることです。

香代さんの後ろには、数人のお迎えの方がいらしているので、香代さんが『もう少しこちらにいたい』という気持ちがおさまったときに、どうするかを決めればいいのですよ。

「まだ息子のそばにいたい」という香代さんの想いを叶え、納得してもらうことが、成仏にもつながります。

いずれにしても、今の状態のままでは、成仏は難しいのです」

 

美津子さんと長女の方は、涙ながらに私の話を聞いていました。

 

「香代さんは、『もう少しだけ、翼君のそばにいさせてください』とおっしゃっています。もう少し、この状況のままでいて、娘さんの想いを尊重してあげましょう」 

 

「娘は、ずっと成仏できないのでしょうか?」

 美津子さんが不安な表情で尋ねられました。

 

「いいえ、そう遠い先ではなく、娘さんは成仏できます。

娘さんには、死を受け入れる自覚はあります。ただ、母として、息子さんを愛する気持ちが強く、もう少しだけ、翼君のそばにいたいのです。

翼君が、だんだんマンションに来なくなったとき、娘さんは成仏したと思ってください」 

 

「そのときに、また見ていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「もちろんです」 

一年後の夏、美津子さんから、ご予約のメールが届きました。

ご相談内容は、「あのマンションの売却を考えているが、どうでしょうか?」というものでした。

 

私は、今回のカウンセリングは、カウンセリングルームで行うのではなく、最初からマンションをお訪ねしたほうがよいと思い、再度、マンションに伺いました。

マンションの部屋は、一年前と何も変わらず、そのままの状態となっていました。

ただ、一年前と違うのは、もう香代さんの気配を感じないことです。

私は、安堵しました。 

 

「香代さん、ちゃんと成仏されて、良かったですね。マンションの売却の件ですが、売却されてもよろしいかと思いますよ」

 

美津子さんは娘さんが成仏されたことで胸をなでおろし、安心されていました。

そして、今の翼君の様子話してくださいました。

 

「実は、以前、見ていただく前は、この部屋を見るのがつらくて、すぐに売却することも考えていたのです。

でも、娘がここで、もう少し翼と一緒にいたいと思っているのなら、最後の願いを叶えてあげたくて、売却せずにこのままにしていました。

一年前、小林さんから、 『翼がこのマンションに足を運ばなくなったら、娘は成仏している』とお聞きし、

今はもう、翼もこのマンションに来ることもなくなったので、もう娘は大丈夫なのかなと思い、再度、相談させていただいたのです。

翼は、今年の4月に幼稚園に入り、同じ幼稚園の近所のお友達たちとも遊ぶようになり、だんだんとマンションには行かなくなりました、

今はもう、まったくマンションには行かずに、友達と幼稚園で楽しく過ごしています」

 

「香代さんは、翼君が元気に過ごしている姿をそばで見ていて、安心されたのですね。やっと向こうに旅立っていけたのでしょう」

 

「小林さん、一つ伺ってよろしいですか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「翼を心配していた娘は成仏できていませんでしたが、翼の父親はどうだったのでしょうか?先に成仏していたのですか?」 

 

美津子さんは不思議そうに、私は尋ねたのです。

私は、すぐに答えました。

 

「いいえ、あのときは、翼君のお父様も成仏していませんでした。翼君を心配して 『そばにいたい』という香代さんの気持ちを酌んで、香代さんを待っていましたよ。 

 最初にマンションを訪れ、香代さんを見たとき、その背後で、お迎えの人と一緒にお父様も見守っていました。

今はお2人とも成仏されています」

 

「そうでしたか。2人とも、もう何も苦しまずに安心してね。母さんと姉さんたちで、翼をちゃんと育てるから、安心しなさいね」

 

ハンカチで涙を拭いながら、亡き娘さん夫婦に語りかける美津子さんの涙は、絶望した悲しみの涙ではなく、安堵の涙でした。

 そして私は、その涙から、決意にあふれた力強さのようなものを感じ取りました。

 

「翼が元気で過ごしている姿を娘たちに見てもらわないと!」

 

そう言って、美津子さんは笑顔を見せてくれました。

 

遺してきた者への想い

今回のケースは、母親が我が子を心配し、「もう少しだけ、そばにいたい」という気持ちから、自ら成仏せずに我が子のそばに寄り添っているものでした。 

本来は、魂の状態になって、きちんと成仏したあとでも、愛する人のすぐそばで見守り、寄り添うことは可能です。

けれども、香代さんの場合は、無念な気持ちと遺してきた息子を心配する気持ちがあまりにも大きく、エネルギーが地上界に縛りつけられてしまっていたのです。

翼君の元気な姿を見て安堵し、無念さと心配が和らいだと同時に、執着するエネルギーが解き放たれ、霊界へ向けて旅立つことができました。

 

しかし、この世界には、遺してきた人たちが心配で、成仏できない魂も多く存在しています。

その大きな理由の一つには、私たち(生きている人間側)が引きとめてしまっている場合もあるのです。

 

愛する人を失った大きな悲しみにより、前向きに生きられなくなったり、故人に対して「何で私を遺して逝ってしまったの? 私も死にたい……」と、大変な悲しみに暮れてしまっていると、それを見ている故人の魂は、心配のあまり、成仏できなくなってしまうのです。

愛する人を失うのは、とてもつらいことです。

自分の魂をも、半分削られたような気持ちとなるでしょう。

しかし、残された者が、その大きな悲しみにより、生きていくことが困難な精神状態になることで、亡き愛する人の成仏を妨げてしまうこともあるのです。

亡き愛する人の幸せを願うのであれば、遺された者が、「元気に生きている」 「元気に生きていきます」という姿を見せて安心してもらうことが、何よりも成仏につながるのです。 

愛する人が魂になっても、いつもすぐそばにいて、あなたを見守り続けてくれていることを忘れないでください。

 

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