子どもと自分の幸せに繋がった離婚という選択 第二話
前回からの続きです。 夫から、やることすべてに制限をかけられ、この先生きていくことに強い不安感を感じている律子さん。 ご主人様の前世、律子さんの前世をお伝えすると、律子さんは話し始めました。
本当の心の自由と自立
「前世の私と今の私、とても似ています……。
私の主人は会社を経営しています。
しかし、私が自由に使えるお金はありません。すべてを管理されています。
会社の利益は大きいはずなのに、私に管理させると自由に使われる……と言うのです。
私が、私の友人と出かけることも許されません。
制限をかけられます。
高校や大学の同窓会にも出席させてもらえません。
少しでも反発すると、『誰が生活させてやっているんだ!』と……。
そんな日々が続くと、もちろん、何度も離婚が頭をよぎりました。
しかし、子どもにもどんどん学費がかかるし、離婚したら生活できなくなるでしょう。
前世のお話を聞きながら、今と同じようなことを繰り返しているんだ……と思いました。
私はここから抜け出せないのですね……」
「それは違います。前世から持ち越してきたカルマは、現世で再チャレンジさせられているんですよ。
ここから抜け出せないのではなく、抜け出すために、このような状況に置かれているんです。
前世では、自分の気持ちを抑え、そして、自由を抑えて生涯過ごしましたね。
でも、現世では、いくらでも自分の意思で自由に変えていくことができる、その変えていくことが『自立』であり、カルマの解消になるんです」
律子さんは、小さく何度もうなずいていました。
「律子さん、先ほど、離婚したら生活できなくなると言いましたね?それが『とらわれ』ですよ」
「とらわれ……ですか?」
「そうです、今は『生活ができている、お金には苦労してはいない』という『利得』 があります。
でも、離婚したら、自分でお金を稼がなくてはいけないし、大変になる ……と天秤にかけたときに、どうしても『利得』を選んでしまいます。
それが『執着』や『固執』であり、自分が自由になることに制限をかけていることでもあります。
ですので、本当の心の自由、自立は、その『利得』を捨てる覚悟を持つこと、そして、本当の心の自由や自立を自分の手でつかむということが、現世の課題なんですよ。
また、そうすることで、律子さんのお子さんたちも、本当のお母さんの姿が見られて嬉しいはず。
先ほど言われていたご主人の話を、よく思い返してみてください。
ご主人は、幼少期、ご両親が喧嘩ばかりで、いつも泣いていましたよね。
そして、お母さんが出ていってしまって、つらくて苦しかったんですよね……。
そのときの悲しみが、今、『見捨てられ不安』につながって、律子さんを縛ろうとしている……。
でも、ご主人のご両親と同じことを、律子さんたちはしているんです。
すると、お子さんたちの気持ちはどうでしょう?」
律子さんの目から、涙があふれ出しました。
「子どもたちには、とても悪いことをしました。
私たち夫婦の喧嘩や暴力を見続けてきた子どもたちの気持ちは、考えていませんでした。
私、自分のことばかりでした。
おっしゃる通りです。利得、執着、その通りです……。でも、それでは、私は前世の繰り返しで、現世でも自分の生き方を抑えて終わっていきそうです……。
私、前世と同じ繰り返しはしたくないです。
そして、子どもたちにつらい思いを、これ以上させたくないです!」
そしてカウンセリングが終了しました。
離婚に対する恐れの気持ちが、自分自身の生き方に制限をかける
離婚に罪悪感や恐れの気持ちを持ち、「何とか離婚せずにいよう」と思いながら過ごしている方は、私のところに来られるお客様の中にも多いです。
離婚に対する罪悪感や恐れの気持ちが、自分自身の生き方に制限をかけることにつながっているということに気づかず、逆に、離婚することにより、自分や子どもたちが不幸になると考えているため、離婚に踏み切れないのでしょう。
しかし、「離婚することで不幸になる(生活苦、母子家庭、世間体など)」と思い込んでいるものは、イコール、「自分が苦労したくない」という本音の心ではないでしょうか?
子どものために、父親がいたほうがよいから……。
これは、離婚に踏み切らない理由で一番多く挙げられるものですが、もし、夫婦仲がとても悪く、子どもの前で夫婦喧嘩をしたり、父親、または母親の悪口を子どもに言ったりしていると、その冷め切った雰囲気は子どもにしっかりと伝わります。
母親は笑顔がなくなってイライラし、父親は口もきかない……。
このような状況が、本当に「子どものため」になるのでしょうか。
子どもの成長段階において、成人後の性格を形成するのに、親子関係は非常に重要です。
子ども時代に不仲な両親に挟まれて生活することになると、絶えず心の葛藤に苛まれることになってしまうのです。
それを知ったうえで、「子どものため」という理由で離婚に踏み切れないのであれば、それは実は、子どものためではなく、「自分のため」なのです。
心の自由、心の自立がカルマ解消の鍵となる
離婚後の生活の不安や世間体など、「物質的な苦労」への不安にとらわれて、 自分自身の「心の自由」や「心の自立」を制限してしまっているのです。
破綻した夫婦関係からも利得が生じているがゆえ、その利得を捨てきれないでいる理由を「子どものために離婚しないほうがよい」と転換させていることに、自分自身も気づいていない場合が多いのです。
人は、意識的にも、無意識的にも、苦労は避けたい……。
目に見えない未来は、不安なもの。
そのため、未来に向けてのチャレンジに制限をかけてしまいがちです。
しかし、そのチャレンジこそが、すべてのカルマを解消する鍵であり、真の心の自立を促すものでもあるのです。
その後、律子さんから連絡はなく、おおよそ1年が過ぎた頃でしょうか。
ある日、カウンセリングに来られたお客様を見て驚きました。
何と、律子さんだったのです。
カウンセリングの予約の際、名字も住所も変わっていたので、律子さんだということがわからず、お越しになられて初めて気づいたのです。
「名字が変わったのですね!」
「はい、離婚しました。
あのときのカウンセリングはショックでした。
私の隠していた心の中を見透かされた気分で……。
そして、前世の体験も強烈でした。
あのあと、小林さんに言われたことすべてを何度も思い返して、『まったく、その通りだ、私はまた、このままの人生で終わってしまう』と思ったら、何かがスッと抜け落ちたように、今までの利得や執着が、もうどうでもよくなったんです。
それからは、すぐに離婚に進めました。
私、昔は看護師をしていたのですが、結婚後に辞めていて、仕事からは長年離れていたのですが、離婚してすぐに病院に勤めました。
生活に余裕はないですが、子どもたちと3人で暮らしています。
子どもたちも、とても元気で、親子3人で笑うことが多くなりました」
とても嬉しい報告でした。
執着、固執を捨てることが幸せへの近道
夫婦は添い遂げるという場合だけではなく、「お互いの自立」を学ぶために 「離婚」という選択を経験しなくてはならないこともあるのです。
あなたがもし、
「つらい状況なのに離婚できない」というのであれば、
「その状況から得ているものは何か」を、もう一度よく考えてみてください。
その状況から得ているのは、実は、自分にとって制限をかけているもの……
たとえば、執着や固執、依存であるということに気づくかもしれません。
それらを脱ぎ捨て、真の心の自立をすることこそが、結果的には、みんなが幸せになれる近道なのです。