寝たきりの妻からのメッセージ

普段の何気ない家族の会話。

大半の人は、それを当たり前のことであると感じているでしょう。

「会話ができる」ということ、「自分の意思を伝え合う」ということ、それらがたとえ喧嘩であっても、お小言のようなことであっても、相手と意思疎通できるということが幸せであるということを、この実話から感じ取っていただければと思うのです。 

もう一度、話ができるなら、この思いを伝えたい

ある夏の台風の日。 

強風と大雨で、「この天候で、交通機関は大丈夫なのか?」と、カウンセリングに来られるご相談者の心配をしていました。 

電車のダイヤが乱れる中、神山良太さんは、お母様とご一緒に、駅からタクシーでいらっしゃいました。

 

スピリチュアルカウンセリングご相談の内容は、良太さんの奥様の朋美さんのことです。

朋美さんは当時34歳、2人のお子さんはそれぞれ6歳と8歳でした。

 

朋美さんは2年前、交通事故に遭い、何とか一命は取り留めたものの、後遺症で脳障害を起こし、体の麻痺のため寝たきりの状態でした。

会話はまったくできない状況で、物事の認知も困難な状況となってしまったのです。

現在は、ご主人の問いかけにも反応しない状態……。

良太さんは、涙ながらに語りました。

 

「あの事故の前日、家族でディズニーランドに行ったんです。

そのときの妻の姿が、今でも目に焼きついて離れません。

あんなに元気だったのに……。

明るく活発で、幼稚園の役員も引き受けて、家にも友人がいつも出入りしていて交友関係も広かった妻が……。

なぜ、このような目に遭わなくてはならないのか……」

 

私は、持参していただいた朋美さんのお写真を拝見しました。

事故前と事故後の2枚の写真は、まるで別人のような表情で、身近にいるご家族は、その変わりように戸惑っていることでしょう。

昨日までお元気だったのに、突然、事故などで亡くなってしまう方もいます。

それも大きな悲しみですが、たとえ命があっても、全身麻痺の状態で変わり果てた妻の姿を見ていることも、つらいことです。

良太さんは言いました。 

 

「妻は今、暗闇の中にいます。私も子どもたちも、妻がこのような状態になり、まるで暗闇の中にいるようです。

あの事故が起きる前は、人並みでしたが、普通に幸せでした。

バーベキューが好きで、休みにはよくオートキャンプに行ったり、山登りしたり、妻もとてもアクティブでしたので……。

一緒に行動することが当たり前のように感じていました。

でも、その当たり前のことが、何とかけがえのないことだったのだろうと、毎日、妻と子どもたちと過ごした日々を思い出して、いまだに事故が現実に起きたこととして受け入れられないんです。

私はどうしたらいいのでしょう……。

子どもたちは、どうしたらいいのでしょう ……」 

 

良太さんと一緒にお越しになったお母様も、涙ながらにお話しされました。

 

「こんなことになるとは……。息子は朋美さんがこのような状況になり、将来を悲観して鬱病になってしまい、今、病院で治療を受けています。

息子には子どもたちもい るんだから、もっとしっかりしてもらいたいと思うのですが……」

 

お母様は、良太さんの現状を語ってくれました。

良太さんは生きる気力を失っていました。

私は良太さんのお話を伺いながら、同時にあるビジョンを受け取っていました。

 

それは、良太さんと朋美さんが出逢った「前世」のビジョンです。

「今、守護霊からのメッセージや、さまざまなビジョンを受け取っていますので、少しお時間をくださいね」

私は、ビジョンの続きをリーディングし始めました。

 

前世から受け取ったビジョン

ヨーロッパらしき田園風景が広がる、のどかな街並み。

2人の小さな女の子の姉妹が、色とりどりの花が咲き乱れる庭で遊んでいる姿が見えます。

その向こうには、子どもたちの両親が。

それは、良太さんと朋美さんの前世での姿です。

2人は、前世でも夫婦だったのです。

2人の子どもの父親である良太さんは、とても子どもたちを愛し、可愛がっていて、何をするにも、どこに行くのも一緒だったようです。

母親である朋美さんも、子どもたちに手作りの洋服を着せ、姉妹はお茶目な笑顔を見せています。

私の目の前には、なんとも可愛らしい笑顔が映し出されています。

みんなでお菓子作りをしているのでしょうか?

姉妹は小さな手をペッタンペッタンとさせ、お菓子作りに励み、顔まで粉だらけです。

そして、姉妹のそばには、母親の優しい笑顔。

数年間のさまざまな幸せな日々の光景が、私の目の前に走馬灯のように映し出されていました。

本当に幸せな日々だったようです。

しかし、その幸せな日々が、突然、打ち砕かれたのです。

家のすぐ近くに、美しい湖があります。

しかし、その美しい湖は、悲しみの湖となってしまったのです。

私の目の前に映し出された光景は、まだ幼い2人の姉妹が、湖畔につながれているボートに乗って遊んでいるところです。

しかし、突然ロープが外れ、ボートは湖へと流されてしまいました。

ボートの上の2人は、岸へ帰りたくて泣きじゃくっています。

そして、妹が急に立ち上がり、バランスを崩して湖に転落したのです。

それを助けようとした姉は、妹にボートの上から手を差し伸べるのですが、一緒に湖に転落してしまったのでした。

そこでビジョンは切り替わりました。

葬儀の場面です。

号泣する両親。母親は強い自責の念を抱いています。

ほんのちょっと目を離した間の出来事だったのです。 

この日を境に、この家族の幸せは一転しました。

夫は妻を責めました。

愛する我が子たちを失ったことで、生きる意味が見いだせなくなり、家に引きこもってしまい、笑うこともなく、顔の表情もなくなりました。

妻を責める日々……そんな自分自身にも嫌気がさし、自暴自棄の状態のまま数年が過ぎ、愛する大切な我が子を失った大きな悲しみから立ち直ることができず、最後は、

自ら命を絶ってしまいました。

そして、子どもと夫の命を奪ったのは自分のせいだと思い、妻も後を追ったのです……。

良太さんは、前世では「愛する者の死」という現実を受け入れることができず、我が子を失った深い悲しみから、自らの命を絶つという選択をしてしまったようです。

これが大きなカルマとなり、現世においては、そのカルマを克服するために、再び妻や子どもたちと巡り会ったのです。

 私は、前世のビジョンを良太さんにお伝えしました。

 

「それでは、また再びつらい思いを経験するために、私たちは夫婦として出会ったのでしょうか……」

 良太さんは肩を落としながらつぶやきました。

 

「そうではありません。しかし、カルマはどうしても前世の課題を持ち越すので、立場を変えても、同じようなシチュエーションになりやすいのです。

でも、それは同じ悲しみを経験するためではありません。悲しみを乗り越えるために、この課題を、魂は自ら選択しているのですよ。

前世での良太さんは、自暴自棄になった自分を責めていました。そして、生きる力も失い、その人生を投げ出してしまいました。

ですから、この現世で同じことを繰り返してはいけないのです」

 

そのとき、突然、守護霊よりメッセージが届きました。

 

【つらいことから目を背けて逃げ出してしまえば、

みんな、悲しみの中から、前に進むことはできません。

現実を受け入れることで、新たな人生がつながっていくもの。

目を背けず、今度は家族でさらに助け合い、新たな絆を作るのです。

絆は、決して楽しみのあとだけに築かれるものではなく、

苦難を共有した中で大きく培われていくものです】

 

守護霊からのメッセージのあとには、朋美さんの気持ち、朋美さんが伝えたい思念が届きました。

 

「パパ、ごめんね、私がこのような状態になったことで、パパや子どもたちみんなに迷惑をかけているね。

私、悔しいよ。パパの声も子どもたちの声も聞こえているんだよ。

返事をしているけど、その声はパパや子どもたちに届かないの」

 

私は、朋美さんの想いを良太さんに伝えたのですが、良太さんは泣きだしてしまいました。

 

「声が届かなければ、俺らはわからないんだよ……」

 

すると、再びビジョンが届いたのです。朋美さんからです。

朋美さんの寝ているベッドの上に、お子さんが飲み物をこぼし、それを良太さんがひどく叱っています。

 

「そんなに叱らないで。私に飲み物をくれようとしていたのだから」

 

 朋美さんから届いたこのビジョンを、良太さんに伝えました。

 

「このようなビジョンが朋美さんから送られてきていますが、わかりますか?」

 

すると良太さんは、泣き伏していた顔をハッと上げ、目を見開き、しばらく言葉が出ない様子でした。

そして少し間をおいて、話し始めました。

 

「その通りです、子どもが朋美の寝ているベッドにジュースをこぼしたんです。私は、ひどく叱りました。

子どもは

『ママが、のど渇いたって言っていたから、ジュースをあげようとしたら、こぼしちゃった』

と泣いていました。

なんてことだ!

では、朋美はすべてわかっているのですか? 聞こえているのですか?」

 

私は言いました。 

 

「もちろんです、先ほども言いましたよね。朋美さんが、『みんなの声は聞こえているけど、自分の声は届かない』と言っています」 

 

それを聞いて、良太さんは号泣されました。

 

「朋美、ごめんな、全部聞こえていて、わかっていたんだね。

言葉が伝えられない、話ができないことが、どんなにつらかったか……」

 

私は良太さんにお願いしました。

 

「良太さん、今のその言葉、朋美さんに向かって言ってあげてください。

それで、朋美さんの心も救われるでしょう。

彼女は今、とても強い自責の念を持っています。これでは前世と同じです。

今度は、つらい状況から逃げず、この状況を受け入れ、向き合うことが大切なんです。

朋美さんは、体は以前のようには動かなくても、耳は聞こえています。

気持ちも、心も、以前と変わっていません。

できる限り、共有できる体験を、家族で作ってあげてくださいね」

 

「わかりました。朋美にも、今日帰ったら、さっそく伝えます」

 良太さんは、はっきりと答えてくれました。

 すると、朋美さんからの想いが、再び送られてきたのです。

 

朋美さんからのメッセージ

「今、何よりもつらいことは、自分の想いを伝えられないこと。

体が元気だったときは、それが当たり前だったから、あえて言葉で感謝の気持ちを伝えることはしてこなかった。

 今、会話ができるという当たり前のことが、どれだけありがたくて大切なことだったのか……と感じています。

もう一度会話ができるのなら、大きな声で言いたい。

『大好きだよ』と」 

 

私は、この言葉を紙に書き、良太さんに渡しました。

 

良太さんはそれを見て、しばらく泣き続けていましたが、最後は何かを決心したように、何度も何度もうなずいていました。

これで、この日のカウンセリングは終了しました。

 

翌日、良太さんからメールが届きました。

あれから自宅に帰り、すぐに自分の想いを朋美さんに伝えたそうです。

そして、最後に私が紙に書いた朋美さんからの想いを、朋美さんの前で読み上げたそうです。

すると、驚いたことに、それまで目を動かすことさえできなかった朋美さんが涙を流したそうです。

そして、そのときの良太さんと朋美さんの写真を、私に送ってくれたのです。

 

良太さんのメールより

「朋美の目から涙が流れたんです。奇跡です。

 私の言葉、小林さんが朋美から受け取った想いが、朋美の心に届いていたんですね。

やっと朋美と心の会話ができたような気がします。朋美にはすべてわかっています。

私もクヨクヨしていられません。朋美も頑張っているのだから。

朋美に約束しました。一緒に頑張ろうって。

以前のように、バーベキューなども、朋美と一緒にしようと思います!

体が動かなくても、すべてわかっているのだから。

それと、娘が言っていた

『ママがのど渇いたって言っていたから、ジュースをあげようとした』という話。

これはたぶん、朋美が娘に本当に言っていたのでしょう。

娘は、いわゆるテレパ シーで受け取ったのですよね。

心は通じ合えるということがよくわかりました。

これからは、家族でできる限り、一緒に共有できる時間を作り、前向きに生きていこうと思います」 

 

良太さんの、このご報告は、とてもうれしいものでした。

私が霊的な能力を用いて交信するのは、何も故人だけではありません。

いわゆる痴呆や高度自閉症、または、病気などで言葉を発することができないなどの事情で、自分の想いが伝えられない方々も、想いを交信によって伝えてくることがしばしばあります。

いわゆる「テレパシー」です。

朋美さんから送られて来た想いの中にもありましたが、「会話ができる」という、 普段は当たり前に感じられるようなことですら、とても有難く大切だということは、 本当にその通りだと思います。 

朋美さんの想い……。

 

「もう一度、会話ができるのなら、大きな声で言いたい。『大好きだよ』と」 

 

みなさんも、どうか大切な人、愛する人に、しっかりと「愛している、大好きだよ」と、その気持ちをしっかりと言葉で伝えてあげてください。 

 

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